米国ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ校公衆衛生学部のグループがヒトパピローマウイルス(HPV)と口腔咽頭がんの関係を調べる研究を実施し、結果をNew England Jounal of Medicine(NEJM)誌5月10日号で報告しました。
口腔咽頭がんと診断された100人の患者と、癌の既往がなく良性の疾患で受診した200人を対象に多変量ロジスティック回帰モデルでHPV感染と口腔咽頭がんの関係を評価しています。
その結果、HPV感染と口腔咽頭がんの間に有意な相関がみられました。
HPV感染と口腔咽頭がんとの関係については「HPV-16の口腔感染」のオッズ比が14.6(95%信頼区間6.3-36.6)、「HPVのいずれかの口腔感染」のオッズ比は12.3(5.4-26.4)でした。
セックスパートナーの数が多い(26人以上)群では口腔咽頭がんのリスクが上昇し、「パートナーが0~5人」を基準としたオッズ比は3.1(1.5-6.5、p=0.002)でした。
オーラルセックスのパートナーの数が多い(6人以上)群のリスクも高く、「パートナーが0人」を基準としたオッズ比は3.4(1.3-8.8、p=0.009)でした。
「その場限りのパートナーがいる」「性交の初体験が17歳以下」「コンドームをほとんど使用しない」群の口腔咽頭がんの罹患リスクも高値でした。「得られた結果は、男性へのHPVワクチン接種を支持するものだ」と著者らは述べています。
(Gypsymmber D'Souza et al.NEJM.2007;356:1994-55)
性行為と口腔咽頭がんの関連 |
口腔咽頭がん患者 |
対象とした |
調整オッズ比 |
||
患者全体 |
HPV-16 |
||||
セックスをした相手の数 |
0~5人 |
31(31%) |
108(54%) |
1.0 |
1.0 |
6~25人 |
41(41%) |
63(32%) |
2.2(1.2-4.0) |
2.7(1.4-5.5) |
|
25人以上 |
28(28%) |
29(14%) |
3.1(1.5-6.5) |
4.2(1.8-9.4) |
|
オーラルセックスを行った相手の数 |
0人 |
12(12%) |
38(19%) |
1.0 |
1.0 |
1~5人 |
46(46%) |
110(55%) |
1.9(0.8-4.5) |
3.8(1.0-14.0) |
|
6人以上 |
42(42%) |
52(26%) |
3.4(1.3-8.8) |
2.4(2.2-34.0) |
|
その場限りの性交渉パートナー |
いない |
42(42%) |
120(60%) |
1.0 |
1.0 |
いる |
58(58%) |
80(40%) |
1.7(1.0-3.0) |
2.4(1.2-4.7) |
|
コンドーム使用 |
いつも、あるいはほとんどの場合使用 |
28(28%) |
90(45%) |
1.0 |
1.0 |
全く使用せず、あるいはほとんど使用せず |
72(72%) |
110(55%) |
2.2(1.2-3.8) |
2.1(1.0-4.0) |
米国国民健康栄養調査(NHANES)から14-69歳の男女5579人を対象に、口腔内ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染率を横断研究で調査しました。全体の感染率は6.9%でした。年齢別では30-34歳で7.3%、60-64歳で11.4%と二峰性を示しました。男性は女性より有意に高値でした(10.1%対3.6%、P<0.001)。
文献:Prevalence of Oral HPV Infection in the United States, 2009-2010
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