入れ歯の手入れ、毎日必要 怠れば肺炎リスク3割増

入れ歯(義歯)の清掃を毎日しない人は、する人に比べ、過去1年間の肺炎発症のリスクが1・3倍に高まったと、東北大大学院歯学研究科の相田潤(あいだ・じゅん)准教授らのグループが発表した。

 日本の高齢者の実態を多面的に研究するために続けられているプロジェクト「日本老年学的評価研究(JAGES)」の2016年調査のデータを分析した。

 肺炎は高齢者の死因の上位を占め、その大部分は「誤嚥(ごえん)性肺炎」だ。加齢で物をのみ込む嚥下(えんげ)機能が低下すると、食道に入るべき唾液や飲食物が気管に入ってしまうことがある。その際、一緒に細菌が入り込むと肺炎の発症につながる。予防のために、口の中を清潔に保つケアの重要性が指摘されている。

 グループは、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者のうち入れ歯を使っている7万1千人余りを対象に、清掃の頻度と過去1年間の肺炎発症の有無を調べた。

 すると、入れ歯を毎日清掃する人の肺炎発症率は2・3%だったのに対し、毎日はしないという人は3・0%で、リスクは1・3倍に上昇した。75歳以上に限ると、毎日する人の2・9%に対し、毎日はしない人が4・3%で、リスクは1・58倍とさらに差が開いた。

 入れ歯の表面には「デンチャープラーク」と呼ばれる細菌などから成る有機物が付着しており、これが誤嚥で肺に到達する可能性がある。グループは「毎日の入れ歯の手入れが肺炎予防につながると考えられる。歯科医院で定期的に入れ歯の状態をチェックしたり、家庭で取れない歯石などの入れ歯汚れを除去してもらったりすることも大切だ」としている。