乳歯が抜けるの早くないか... 神戸市が歯科検診で診査へ 乳幼児の難病、早期発見にも

「乳歯の抜ける時期が、標準的な年齢より早くないか」。そんなチェック項目が4月から、神戸市の1歳6カ月児と3歳児の幼児歯科健康診査に加わった。生え替わりの時期より前に乳歯がなくなると、かみ合わせや歯並びが悪くなり、成長や発育にも影響する。また早期に抜ける要因が難病のケースもあるため、市は市歯科医師会と協力し、早期発見や適切な治療に結び付ける環境を整えたという。

 乳歯は通常6歳前後で、下の前歯から永久歯への生え替わりが始まる。外傷や重度の虫歯などで乳歯が欠けた場合、永久歯が生えそろうまでは、歯科医の定期的な処置が必要となる。それに加え、4歳までに乳歯が抜け落ちるケースでは、骨や内臓、呼吸器など全身にさまざまな疾患を起こす難病「低ホスファターゼ症」も疑われる。

 この病気は遺伝子の変化で、健康な骨を作る酵素「アルカリホスファターゼ」の働きが弱まる。症状が現れる時期や種類、程度は異なるが、子どもの体が大きくならず、ハイハイや立ち上がり、歩き始めも遅れがちに。成人になっても、階段の上り下りなどの日常生活動作が難しくなる。

 強く健康な骨を形成するにはカルシウムとリン酸が結合する必要があるが、アルカリホスファターゼが働かないとリン酸が作られない。乳歯が早く脱落するのは、歯茎に埋まっている「歯根」の表面部分の出来が悪くなり、歯とあごの骨が十分くっつかないことが理由とされる。乳歯は通常歯根がない状態で抜けるが、この病気が要因の場合、歯根と一緒に抜けて細長くとがっているのが特徴だ。

 酵素を注射で補う治療法や対症療法が確立されているが、早期発見が重要となる。そこで市は、サインとなる乳歯脱落を見逃さないよう、歯科医がチェックする新項目を幼児歯科健診に加えた。

 従来は歯科医が歯の生え方や虫歯の有無、歯茎の様子などを診査していたが、乳歯が抜けていないかも併せて確認。必要に応じ、専門医への受診を勧める。市は「もし低ホスファターゼ症の場合でも、早めに診断を確定させれば、成長予測や健康管理もしやすくなる」と受診を呼び掛けている。