食道癌術後のICU患者、口腔管理で発熱減る

食道がんの手術後に新しい口腔管理を行い、集中治療室(ICU)に入院中の患者の発熱日数を減らすことに岡山大学の研究グループが成功した。口腔内細菌が原因となって術後の合併症である肺炎を引き起すリスクが高いため対応策が求められてきた。研究グループは口腔管理法を改良、口腔内細菌を減らし術後合併症リスクを軽減、治療予後のQOLを改善できる可能性を見出した。

 研究グループは、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の森田学教授、水野裕文医師のグループを中心に、同研究科の消化器外科分野、医療研究センター、九州大学の共同メンバーで構成。

 食道がんの外科手術は侵襲性が高く、術後に合併症を起こす可能性がある。術後合併症は患者の死亡率を上昇させるためリスクを下げる必要がある。肺炎は罹患率、死亡率が最も高い合併症で、口腔や咽頭内の細菌が原因になり得る。手術の前後である周術期には口腔管理が実施され、主に誤嚥性肺炎予防のために手術前に患者の歯垢除去などが行われている。ICUでは看護師による術後の口腔管理が行われているが、効果的な方法が確立されていない。

 今回、研究グループは手術前後の食道がん患者の口腔管理として、可能な限り歯磨きする管理方法に加え歯間ブラシによる歯間清掃、経口消毒に用いられている塩化ベントニウムと、歯科領域で洗浄剤に用いられる過酸化水素水を併用した口腔粘膜の管理を実施。新しい口腔管理方法を行うことにより、術後1週間のICU患者は、38度C以上の発熱日数が既存管理法4日に対し2日に半減した。

 歯間ブラシによる歯間清掃や薬剤併用による口腔粘膜の管理は多くの看護師が実践可能な方法であるとしている。成果は「Journal of Oral Science(ジャーナル・オブ・オーラル・サイエンス)」オンライン版に掲載された。