4歳前の乳歯脱落、注意 2歳児健診でチェック

低ホスファターゼ症 酵素異常で骨弱くなる難病

 骨や歯を作るのに必要な酵素に異常があり、骨が弱くなる難病「低ホスファターゼ症(HPP)」。4歳ごろまでに乳歯が抜けてしまうのが特徴的な症状。極めてまれな疾患だが、このサインを見逃さないようにしようと、小山、下野市は本年度から、2歳児歯科健診の質問項目に乳歯の抜けなどを追加する全国的にも珍しい取り組みを始めた。

自治医科大とちぎ子ども医療センター小児科田島敏広(たじまとしひろ)教授によると、HPPは遺伝子変異で、健康な骨を作るために必要な酵素「アルカリホスファターゼ(ALP)」の量が少なかったり、働きが悪かったりするために起こる病気。

 症状は発達や成長の遅れ、骨や筋肉の痛み、乳歯の早期脱落、腎の石灰化など。重症の場合、肋骨(ろっこつ)などが十分に成長せず、呼吸障害などで生後間もなく亡くなる。一方、症状が歯に限定されたり、18歳を過ぎてから症状が出たりする場合もある。

 患者は10万人に1人程度で、全国に約200人程度とみられる。2015年に小児慢性特定疾病および指定難病に認定され、同年からALPを皮下注射で補う酵素補充療法ができるようになった。

 乳歯の脱落は通常は6歳前後だが、HPPの場合は歯を固定する力が弱いため1~4歳に抜けてしまう。抜けた歯は歯根も一緒に抜けるため、細長くとがっているのが特徴だ。

 小山歯科医師会はHPPの疑いのある子どもを早期発見しようと、2歳児歯科健診でのチェックを担当地域の小山、下野市に勧め、会員の歯科医師らが田島教授からHPPについての講習を受けた。同会の手束公一(てつかまさかず)会長は「『乳歯はいずれ抜ける』と放置する親もいるかもしれないが、3歳前に抜けるのは異常。健診で分かれば、治療につながる」と期待する。

 小山市は17年8月から、保護者が記入する健康診査票のチェック項目に乳歯のぐらつきと脱落の有無の2項目を追加。下野市も10月から、質問項目に外傷以外での抜け、ぐらつき、身長など成長での心配の有無を問う3項目を追加した。健診時には、歯科医師が歯の状態を確認している。両市ともこれまでHPPの疑いのある子どもはいないという。

 田島教授は「まれな病気だが、早い時期に乳歯が抜けたら、抜けた歯を持参して小児歯科へ行ってほしい」と話している。