岩手医大解剖学講座の原田英光教授(54)と大津圭史講師(42)の研究チームは、歯の表面を覆うエナメル質を作るエナメル芽細胞の生成に関する新しい仕組みを発見した。今後研究が進めば、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使ったエナメル質の再生や、先天性疾患のエナメル質形成不全症の新たな治療法開発につながる可能性もあり、成果が期待される。
歯は表面のエナメル質と内側の象牙質で成り立つ。エナメル質は、エナメル芽細胞が分泌するエナメルタンパクが石灰化したもので、人体で最も硬い組織とされる。
原田教授らは、三つのタンパク質が連なり、合図を出すことで同細胞が作り出されることを発見。さらにその一つのセマフォリン4Dが同細胞の分化を促進させ、残り二つがエナメル質を作るのに必要なエナメルタンパクの産生などに関わっていることも見つけた。
生成の流れやエナメル芽細胞の分化を人為的にコントロールできれば、iPS細胞を使ったエナメル質再生につながる可能性がある。先天的な遺伝子異常でエナメル質がきれいに作られないエナメル質形成不全症の治療法の開発も期待される。